5. ネコとネズミ
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一般的にネコとネズミは仲がよくないと思われていますが、日本にはこんな昔話があります。
昔、山の近くに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日、いつものように、おじいさんとおばあさんが山の畑で仕事をしていると、「ニャーン」と、とても小さい、弱々しい声が聞こえてきました。キョロキョロと見回すと、草むらの中に元気のない子ネコがいました。「おおっ、かわいそうに。おなかがすいているようだね」と自分達のおにぎりを少しわけてあげました。それから、子ネコを家に連れて帰ったんです。
おじいさんとおばあさんはこの子ネコを自分達で育てることにしました。そして、子ネコは大事に、大事に、育てられました。ある日、物置の中から何か変な音が聞こえてきました。そこで子ネコが物置へ入っていくと、「♪よいしょ、こらしょ、お宝、みがこう、ネズミのお宝。♪一生懸命、みがこう、みがこう、ネズミのお宝。♪ピカピカだ、ピッカピッカ!」と、ネズミ達のたのしそうに歌う声が聞こえてきました。
次の日も、子ネコが物置に入ってみると、キョロキョロと回りを見回している子ネズミを見つけました。子ネズミは床にこぼれた豆をひろおうとしていたんです。そのとたん、子ネコは子ネズミに飛びかかりました。「チュ〜〜!」おどろいた子ネズミは、今にも死にそうな声でなきました。「お願いです。どうか私を見逃して下さい。私達は、毎日一生懸命ネズミのお宝をみがかなくてはなりません。これは大変な仕事なんです。私達の母は働きすぎて、病気になってしまったんです。それで母に栄養をつけさせようと、豆を探しているところでした。母が元気になったら、私はあなたに食べられに出てきます。母がよくなるまで待ってください。」そこで、子ネコは子ネズミを離してやりました。「ありがとうございます。必ず約束を守ります。」
子ネズミが穴の中へ帰ってしばらくすると、ネズミたちの前に豆がバラバラと落ちてきました。子ネズミがおどろいて顔をあげてみると、なんと子ネコが一粒一粒、豆を穴に落としていたんです。数日後、子ネコの前に子ネズミが出てきて、言いました。「子ネコさん、ありがとう。母はもうすぐ元気になるでしょう。さあ、約束通り、私を食べて下さい。」しかし子ネコは「ニャーン」と言って、そのまま、物置から出て行きました。「ありがとう。子ネコさん。」ネズミ達の目から涙がポロポロと、こぼれました。
それから数日後、物置の方から、♪チャリリン、チャリリンという音がしてきました。物置の戸を開けたおじいさんとおばあさんは目を丸くして、「これは、どうした事だ?」なんと床の穴の中から、小判がどんどん出てきたんです。そして、小判の後からネズミたちが出てきました。子ネズミが小さな頭をペコリと下げると、「おかげさまで、母の病気もすっかりよくなりました。本当に、ありがとうございました。それと、ネズミのお宝を無事にみがき終えることができました。お礼に少しですが、この小判をさしあげます」
と、山のように積み上げられた小判を指さしました。「ええ!この小判を私達にくれるんですか。」
こうしておじいさんとおばあさんは、いつまでも何不自由なく元気にくらすことができたそうです。
もちろん子ネコと一緒にネズミたちも仲良く暮らしました。めでたし、めでたし。