5. 珍しい苗字、面白い苗字: M. Nouzu
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どの国にも珍しい名前、面白い名前がたくさんある。日本にはやさしい漢字なのに、読めない名前もある。今回はそういう苗字を捜してみた。「苗字」は家族の名前のことだ。因に、日本で一番多い苗字を検索してみると、一位は佐藤、二位は鈴木、三位は高橋、四位は田中、五位は渡辺だそうだ。
最初に紹介したい珍しい苗字は「珍」と「珍名」だ。普通「珍名」は「ちんめい」と読み、珍しい名前という意味だ。珍名さんは北海道に20人位しかいないらしいが、この「ちんな」の語源はアイヌ語で、「ちん」は足を、「な」は水、川を意味していると言われているようだ。そして、「珍名」は当て字だ。当て字というのは漢字の意味は関係なく、その読み方を使う方法だ。次は「面白」だ。「面白」さんも20人位しかいないようだが、その名前が出た土地の風景や地形が面白いということがこの苗字の由来だそうだ。
口頭で自己紹介すると漢字がわからないので、他の意味に取られる苗字も多い。例えば、「わたしは、はなみずです」と自己紹介すると、多分「鼻水」と想像してしまう人が多いだろう。鼻水は英語で nasal mucus とか running nose とかいう意味だが、これが苗字だと「花水」という漢字が使われて、ずいぶんイメージが違う。「花水」は稲の花が咲くころに田んぼに入れる水のことだったり、仏壇にかざる花のための水のことだったりする。「わたしはぺんぎんです」というと、動物の「ペンギン」を想像するだろうが、この苗字を漢字で書くと「辺銀」だそうだ。「辺銀」という苗字の人は沖縄に一世帯しかいないらしい。「ようかい」と聞いたら多分 monstrous creature という意味の「妖怪」だと思うだろうが、この苗字は漢字で「要海」と書き、「要」は need、main などの意味がある。「唐桶」という苗字は珍しいが特別面白い苗字でもなかった。しかし、カラオケバーなどが人気が出てきてから「からおけ」は面白い苗字だと言われるようになった。
漢字で書くと「え!?!」という苗字も多い。そのいい例に「御手洗」という苗字がある。「御手洗」は普通「おてあらい」と読み、「トイレ/便所」のことだと思うだろう。だが、これが苗字だと「みたらい」、「みたらし」、「みてら」と読まれる。神社の入り口に参拝する前に水で手や口を洗って清める場所があるが、そこが「御手洗」と呼ばれている。「御手洗」の漢字を見ると、これは「手を洗う」という意味だ。どうして「トイレ/便所」が「御手洗」と呼ばれるようになったかというと、会話の中で「便所」というのは下品とされ、トイレ/便所を使った後、手を洗うということで「お手洗」と呼ばれるようになったそうだ。「浮気」は普通「うわき」と読み、妻や夫、または決まった恋人がいるのに他の人が好きになったり関係をもったり (have an affair) することをいう。だが、苗字だと「うきげ」、「うきぎ」、「うき」、「うぎ」と読む。この苗字の「浮気」は水が豊(ゆた)かな土地に朝早く行くと水蒸気 (vapor, steam) が上がっていくのが見えるが、その状態を表しているそうだ。
「小浮気」という苗字もある。「おさらぎ」という苗字は「大仏」と書く。「大仏」は普通「だいぶつ」と読まれ、これは英語で great image of Buddha を意味する。
他にも珍しい苗字が色々ある。「白髪」は頭の白い毛のことだが、苗字だと「しらかみ」、「しろがみ」、「しらげ」、「しらが」となり、この苗字の由来は頭の毛ではなく、雪が降った山のイメージだそうだ。他にも「犬」、「一円」、「国宝 (national treasure)」、「無敵 (invincible)」、「宇宙 (universe)」「鼻毛 (一般的な意味はnasal hair、苗字では地形に由来している)」、「毛穴 (pore)」、「酒屋」、「猫屋敷 (house full of cats)」、「煙草」、「風呂」 などがある。
難しい漢字ではないが、読み方がわからない苗字もたくさんある。「十一月二十九日」、「八月一日」、「七五三」、「東西南北」がいい例だろう。
食べ物の名前と同じ苗字には「和食」、「鰻 (eel)」、「烏賊 (squid)」、「鮫 (shark)」、「昆布 (seaweed)」、「味噌」、「醤油」、「大根(野菜としては「だいこん」と読む)」「蕪 (turnip)」、「茄子 (eggplant)」、「蜜柑」、「林檎」、「菓子 (pastry)」などがあり、これだけあれば、一日の献立がたてられそうだ。
幸せになれそうな苗字もある。「幸福 (happiness)」は
九州の鹿児島県で見られる苗字で、
他に「夢(dream)」、「微笑(smile)」、
「虹 (rainbow)」、「祭 (festival)」、
「祝 (celebration)」などがある。
また、「有福」という苗字もある。「有福」という漢字は
「幸福/幸せな事がある」という意味だ。
日本に有福さんは1,500人ぐらい住んでいるらしいが、私の知り合いにも「有福」という人がいる。
彼女の名前(ファーストネーム)は「泉」で、
「水が湧き出る (to gush)」という意味がある。
そこで、「有福泉」は幸せな事があるだけでなく、幸せが湧き出ているということになる。
島根県にある有福温泉
に結婚式場があり、
「有福婚(幸せがある結婚式)」というキャッチフレーズで宣伝しているそうだ。
外国の名前も漢字を使って書く人が増えている。日本文学/文化の第一人者であり、2012年に日本に帰化したDr. Donald Keen は漢字で「鬼 怒鳴門」と書いている。また、日本の有名な推理小説作家「江戸川 乱歩」は、彼が敬愛するアメリカの小説家エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)の発音を漢字に当てはめペンネームにした。外国の名前を漢字で書く時には、英語の意味を考えて選ぶ方法と、英語の発音と漢字の意味を考えて選ぶ方法がある。例えば英語名が「Love」の場合、その意味を考えた場合は、「愛」と書き、「ラブ」と読むだろうし、英語の発音と漢字の意味を考えた場合は、例えば「蘭舞 (orchid dance)」、「羅布 (thin silk cloth)」など、「ら」と読む漢字と「ぶ」と読む漢字を組み合わせると、読みは「ラブ」で色々な意味を持つ苗字を作ることができる。
自分の名前の意味、発音、漢字の意味を考えて自分の名前を漢字にしてみると面白いと思う。
参考サイト
http://myoji-yurai.net
http://lexxus.web.fc2.com/myouji.htm
http://matome.naver.jp/odai/2137310840457791201
http://entermeus.com/72209/
http://www.weblio.jp
珍しい苗字、面白い苗字
「面白い日本語」より
Reproduced with permission of M. Nouzu